テニス後の自己否定感を乗り越える思考記録の勘所:短時間で感情を整理する実践法
試合後の自己否定感を乗り越えるために
テニスの試合や練習後、思うようなパフォーマンスが出せなかった際に、強い悔しさや自己否定感に苛まれることは少なくありません。例えば、決定的なミスを連発して負けてしまったり、練習の成果が出せずに落胆したりといった経験は、多くの愛好家が共感するものでしょう。
こうしたネガティブな感情は、試合直後だけでなく、その後の日常生活や仕事にまで影響を及ぼすことがあります。集中力の低下、モチベーションの喪失、自己肯定感の低下といった形で現れ、多忙なビジネスパーソンにとっては、限られた時間を有効活用する上で大きな障害となり得ます。
しかし、これらの感情は適切に整理し、対処することで、次の活動へのエネルギーへと変換することが可能です。本記事では、試合後の自己否定感を短時間で客観的に見つめ直し、感情を整理するための「思考記録と再評価」という実践的な方法について解説します。
思考記録と再評価の基本
この方法は、私たちが抱く感情と、その感情を引き起こす「思考」との間に密接な関係があるという考えに基づいています。感情は、特定の状況や出来事に対して自動的に生じる思考(自動思考)によって強く影響を受けることが知られています。この自動思考を意識的に記録し、客観的に再評価することで、感情の波に飲み込まれることなく、より建設的な視点を持つことが可能になります。
このアプローチは、いわゆる認知行動療法の一環として用いられることもありますが、ここではそのエッセンスを、忙しい日々の中でも実践しやすい形に落とし込んでご紹介します。専門的な知識は不要であり、必要なのは紙とペン、あるいはスマートフォンのメモ機能だけです。
短時間で実践する思考記録のステップ
試合後の自己否定感を整理するために、以下の4つのステップを実践してみましょう。各ステップは、それぞれ数分程度で取り組むことが可能です。
ステップ1: 状況と感情を記録する
まず、あなたがネガティブな感情を抱いた具体的な状況と、その時に感じた感情を記録します。
- いつ、どこで: 例えば、「今日の午後、テニススクールでの練習試合後」
- どんな状況で: 「最終ゲームで簡単なスマッシュをミスして負けてしまった」
- どんな感情が: 「悔しい、情けない、自己嫌悪、怒り、悲しい」といった具体的な感情を選び、その強さも10段階で記録しておくと、変化を把握しやすくなります。
このステップでは、感情を良い悪いと判断せず、ただありのままに書き出すことが重要です。
ステップ2: 自動思考を特定する
次に、ステップ1で感じた感情の瞬間に、あなたの頭に浮かんだ「自動的に出てきた考え」を書き出します。これが「自動思考」です。
- 「なぜあんな簡単なミスをするのか、自分は本当にダメだ」
- 「いくら練習しても上達しない。もうテニスをやめるべきだ」
- 「周りの人はもっと上手なのに、自分だけが劣っている」
- 「仕事もテニスも中途半端だ」
これらの思考は、普段意識していないことが多いため、少し立ち止まって自分に問いかける時間が必要です。
ステップ3: 思考の証拠を検討する
ステップ2で特定した自動思考が、本当に「事実」に基づいているのかを客観的に検証します。その思考を「裏付ける証拠」と「反証する証拠」の両方を洗い出してみましょう。
思考を裏付ける証拠: * 「確かに、今日のスマッシュは簡単に決められるべきだった」 * 「最近、試合で勝てていないのは事実だ」
思考に反証する証拠: * 「今日の試合では、良いショットもいくつかあった」 * 「練習では少しずつ改善できている点もある」 * 「テニスは趣味であり、楽しむことが一番だと考えている」 * 「ミスは誰にでもあることで、プロでもする」 * 「仕事では成果を出しており、テニスと全く同じ基準で評価すべきではない」 * 「過去には素晴らしいプレーができた試合もあった」
このプロセスは、自分の思考の偏りや、見落としていたポジティブな側面を発見するのに役立ちます。
ステップ4: 代替思考を検討する
ステップ3での証拠の検討を踏まえ、最初に抱いた自動思考よりも、より現実的でバランスの取れた新しい考え方、つまり「代替思考」を導き出します。
- (例: 「自分は本当にダメだ」に対して)
- 「今日のミスは悔しいが、これも成長のための学びの機会だ」
- 「ミスから学び、次の練習で改善点に取り組もう」
- 「テニスはスキルアップだけでなく、ストレス解消や仲間との交流も大切な目的だ」
- 「完璧な人間はいない。今回の経験を次に活かすことに集中しよう」
代替思考は、単なるポジティブ思考への転換ではなく、事実に基づき、自己を建設的に見つめ直すための視点です。
実践のポイントと効果
この思考記録と再評価のワークは、試合直後だけでなく、感情が収まってきた後でも取り組むことが可能です。多忙な日々の中で時間を確保するのが難しい場合は、移動時間や休憩時間など、短時間でも構いません。スマートフォンのメモ機能を利用すれば、場所を選ばずに手軽に実践できます。
この実践を繰り返すことで、あなたはネガティブな感情に囚われにくくなり、感情の浮き沈みを客観的に捉える力が養われます。自己否定感を乗り越え、次のテニスや日々の仕事に前向きな気持ちで取り組むための、確かな一歩となるでしょう。
メンタルのリカバリーは、自分自身と向き合うことから始まります。この思考記録のワークが、あなたの心の健康とパフォーマンス向上の一助となることを願っております。